
多面的な視点で中小企業の DX に伴走。フリーランスコンサルタントの現在地
DX が進むなか、企業の業務改革を支える「社外のプロフェッショナル人材」の存在感が増しています。ソレクティブでもコンサルティングが強みの認定プロが多数活動していますが、こうした専門人材は外部の立場から企業の課題をどのように捉えているのでしょうか。
今回話を聞くのは、 複数の企業において Web および IT 領域で20年以上の経験を積み、満を持してフリーランスとなった篠澤宏典さん。長年 IT 業界で培った知見と、いくつもの立場を経験してきたからこそ持てる複数の視点で企業の業務改革を支援しています。

「中小企業支援」×「生成 AI」を独立の軸に
―フリーランスになったきっかけを教えてください。
子どもの頃に松下幸之助を取り上げたテレビ番組を見て、「まっさらなところから独自の哲学で会社を動かし、日本経済を支える起業家はかっこいいな」と憧れたのが原点です。ただ、いつかは起業したいと思いながらも事業のピントが定まらず、会社勤めが長く続きました。
独立のきっかけになったのは2023年、事業承継についての説明を聞いたときでした。誰かの事業を引き継ぐことを想像してみたら、「やっぱり独自のソリューションやサービスを展開したい」という思いがかえって確かになったんです。
―「ピント」はどこに定まったのでしょうか。
手法はデジタルの活用、そして対象は中小企業に照準を合わせました。
会社員時代にさまざまな企業や立場を経験するなかで、どんな規模の企業にも情報の散在や属人化のような共通の課題があり、それらはデジタル活用で解決できるという実感を得たんです。でも、DX に多額の外注費をかけられるのはごく一部の大企業のみ。ちょっとのデジタル活用で現場はもっと動きやすくなるのに、自己流で何とかしている中小企業をたくさん見てきました。
フリーランスになって小回りが利く状態で、そんな中小企業の力になりたいと思ったんです。
―DX のなかでも、生成 AI を活用したサービスを開発・提供されていますね。
独立した2024年11月ごろからの数か月で生成 AI の精度や使いやすさが急速に上がり、一気に「使える」道具になりました。
ただ、進化が目覚ましいので、専門家でない人が常に最新情報を追いながら業務で使いこなすのは難しい。それなら僕が AI の進化をキャッチアップし、業務に合った形で提供すれば、業務改善から企業の成長へとつながるサービスにできる、と考えたんです。
同時に仕事のやり方の面でも、安定して価値を届けるにはエージェント経由の案件を受けるだけでなく、自分が提供できる支援を整理し、伝わりやすくパッケージ化する必要があると感じ始めていました。そこで、2025年の2月から構想をまとめ、4月からは生成 AI を活用した業務サポートを独自の支援サービスとして提供開始しました。誰にもお伺いを立てずに、自分で判断・実行できるフリーランスならではのスピード感が生きたと思います。
こうして「中小企業の課題をデジタルで解決したい」という思いと生成 AI の進化がピタッと重なり、「デジタルコンサルティング」×「AI 活用サービス」という軸が完全に定まりました。
強みは全体を見通し、核心を見極める視座
―これまでの経験は、フリーランスになった今どう生きていますか?
会社員時代は、ウェブマーケティング、システム開発の上流工程、EC 構築および運営、営業、事業開発と幅広い業務を経験しました。エンジニアではありませんがシステム面もある程度理解しているので、特に IT 系の企業では全体像を俯瞰したコンサルティングが可能です。
また、1つのプロジェクトでいくつもの役割を兼務していたときは、目先の課題だけ解決しているとほかのチームにしわ寄せが行く、しかもそのしわ寄せを食らうのも自分、という状況もありました。そうしたなかで、全体を整理し、真の課題は何なのか?を見極める力が鍛えられたと思います。
この力は、AI を活用した業務支援のなかでも特に「AI を使ったあと」に発揮できると感じています。たとえば、従業員の業務メモをAIで要約・分類すれば、個々の時間の使い方や成果はすぐに可視化できる。でも、その先にある「どこを優先して業務改善するか」には人間の判断が欠かせません。
僕自身、幅広い業務を経験してきた立場から全体像を俯瞰し、現場に最適な判断をサポートできます。部門単位でこのしくみを取り入れて業務の無駄を洗い出せれば、将来的に「作業時間を25%削減」といった成果も期待できるのではないかと考えています。
―取引先との関わり方で意識していることはありますか?
フリーランスになって、取引先の現場にダイレクトにつながることができる案件をなるべく選ぶようにしています。現場までいくつもレイヤーがあると、やりとりや契約面で間に入る人の意向を気にする場面が出てきてもどかしさが残ることがあるんです。現場と直接やりとりできるとそんなフラストレーションが減りますし、効果が出るまでのスピードも断然速いと感じています。
もう1つ、会社員時代に中間管理職としてさんざん板挟みに悩んだ経験も今役立っています。上司と部下、経営と現場、取引先と自社…いろんな方向から挟まれる苦労がわかるからこそ、間に立つ人に寄り添い、成果を出していく方法を一緒に考えるスタンスを自然と取れていますね。
責任を引き受ける覚悟がフリーランスの第一歩
―今後の展望を教えてください。
1つの部門で業務改善できたら、次はこの部門、その次はここ…と広げて、その企業全体のDXを支援できたらいいですね。
問題があるのは1か所だけ、ということはまずありません。どの部署でも、どのレイヤーでも何らかの課題はある。だからこそ、そうした課題を部門ごとでなく俯瞰して解決したいです。
改善した部署も視野に入れ続けられるので、「次の部署に入っているうちに前の部署が元に戻ってしまった」といった事態も防ぎながら、長期的に企業全体の成長を支援できると思います。
―独立を検討している人へ、メッセージをお願いします。
可能なら、副業などの形で小さくてもいいから一度「1人で引き受ける」経験をしてみるといいんじゃないでしょうか。
会社員でも、もちろん責任は伴います。でも1人で引き受けるときとは感じ方の質がまるで違いますから。自分しかいない、誰も助けてくれないなかでどれだけ取引先にコミットして、責任を持った行動と発言ができるか。実際やってみるとフリーランスとしての動き方がより鮮明に見えてきますよ。
―本日はありがとうございました!
Writer / Eriko Normal
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Editor / Yuna Park
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